みずのわ出版


 山口県周防大島の出版社、です


神戸市戦災焼失区域図復刻版

神戸市戦災焼失区域図復刻版
神戸市戦災焼失区域図復刻版


柳原一徳 編
2013年8月刊
天地382mm×左右1080mm 変形折
本体2000円+税
ISBN978-4-86426-026-8 C0025
パッケージデザイン 林哲夫
印刷 (株)山田写真製版所
プリンティングディレクション 熊倉桂三・高智之((株)山田写真製版所)




「神戸市戦災焼失区域図」復刻にあたって


「神戸市戦災焼失区域図」(以下、戦災焼失区域図。天地382mm×左右1080mm、縮尺20,000分の1)は、戦中の国策統合会社であった旧・日本地図株式会社により1946(昭和21)年6月に刊行された。これは、1946年1月に始まる海外からの引揚げ事業に備えて、第一復員省資料課が敗戦後3ヶ月の短期間で作成した「全国主要都市戦災概況図」(1945年12月)を元に制作したものと思われる。
 アジア太平洋戦争下、神戸市が受けた空襲被害について『写真集 神戸100年』(編集・発行=神戸市、1989年4月)は「昭和19年12月、B29の飛来は神戸市民を恐怖におとしいれた。偵察だけでまもなく飛び去りホッとしたのもつかの間、翌20年3月17日夜、およそ300機のB29が神戸を爆撃、現在の中央区から長田区一帯が大きな被害を受けた。続いて5月11日に川西航空機甲南製作所付近(現・東灘区本庄町)が、6月5日には市東部から中心部にかけてと須磨が焼失した。この3大空襲を含め、神戸が敗戦までに受けた空襲は128回。死者8,841人、負傷者は約1万8千人におよんだ」(104頁)と記す。
 戦災焼失区域図では、上記の空襲により焼失した地域が赤色で示されており、神戸の街のほぼ全域を焼き尽くした、その被害の大きさが実感できる。また、近代以降、1945年の空襲と1995年の阪神淡路大震災で二度にわたって灰燼に帰した旧六大都市・神戸の、戦災復興土地区画整理事業が行われる前の街区、住居表示法(1962年施行)により失われた町名を今に伝える資料でもある。
 なぜに神戸の戦災焼失区域図を山口県の版元が、といえば、小社は阪神淡路大震災後の1997(平成9)年12月に創業して以来、東北大震災・福島第一原発爆発事故後の2011(平成23)年9月(実質的には3月)に山口県周防大島に移転するまでの足掛け15年にわたり、神戸で出版活動を続けてきた。そのなかで、数年前に広島市の古書店・あき書房の石踊一則氏より、「神戸の近現代史を批判的にとらえてきた貴兄がこれを復刻すべきだ」といって、保存状態の良好な戦災焼失区域図を譲っていただいたのが切っ掛けである。石踊氏はここ数年にわたり、原爆投下で壊滅した広島市の戦前戦中地図復刻版の制作に取り組んでいる。そう、日本人が日本の社会にあって出版という仕事に携わる以上、直截にその体験をもたない戦後世代の精神形成にまで深い翳を落としてきた、あの戦争の問題を避けて通ってはならない。
 戦時下を生きぬいた世代が次々と世を去り記憶の風化が進むなかにあって、いま、非戦を誓った日本国憲法が改定の危機に直面している。憲法を守るとともに、都市に刻まれた戦争の記憶を掘り起こし次代に伝えることは急務であり、そのために資料は不可欠のものである。良好な状態で残る戦災焼失区域図は貴重で、古書市場にもあまり出回っていないと聞く。これでは、多くの人の目にふれる機会は得られない。資料は一般読者が求めやすい価格で、広く行き渡ることが肝要である。戦後70年・震災20年という「節目」とは関係なく、これだけは一日も早く復刻刊行しておかねばならないという意志をもって、今回、復刻版の刊行に踏み切った。
 先にも述べたとおり、小社は2011年に神戸から山口県周防大島に移転し、細々とではあるが出版活動を継続している。1945年の戦災と半世紀を経た1995年の震災、この、人死ににまつわる記憶を大切にしない神戸という街のありように対するアンチテーゼと云うべき書籍を刊行し続けてきたものの、それが受け容れられることなく、絶望をもって神戸を去った版元である。この消失区域図の復刻刊行は、小社の、神戸でやり残した仕事の一つであるが、それにもまして、日本の近現代史を検証するうえで欠くべからざる仕事の一つでもある。この国土にいま生きている人々、そして、これからやってくる人々のために、心ある人によってこの資料が活用されるのであれば、一黒子として、これにまさる喜びはない。
2013(平成25)年8月
                                                      柳原一徳(みずのわ出版代表)


[用紙/刷]
復刻地図 新鳥の子 古染 四六判Y目 90kg 4°
パッケージ OKブリザード 四六判103kg 4°



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