みずのわ出版


本拠地 ・ 山口県周防大島の出版社、です


―詳 細―

ほんの昨日のこと ――余録抄2001-2009

ほんの昨日のこと――余録抄2001-2009

ほんの昨日のこと

   ――余録抄2001-2009


池田知隆 著
2009年7月刊
四六判並製253頁
本体1500円+税
ISBN978-4-944173-70-9 C0095
装幀 林哲夫




[あとがき、より]

誰が風を見たでしょう
僕もあなたも見やしない
けれど木の葉を顫(ふる)わせて
風は通りぬけてゆく
  クリスティナ・ロセッティ 詩  西条八十 訳

 風はどこから始まり、どこに流れていくのか、だれにもわからない。緑のそよ風、樹木をなぎ倒す突風、宮沢賢治の詩にある「きららか」な風のほか、時代の風というのもある。世の中の空気の流れによって社会がきしみ、「しゃっくり」を起こすかのように数々の事件が生じる。
 21世紀が始まった2001年の10月、私は毎日新聞の論説委員(大阪在勤)になり、1面のコラム「余録」を書く機会に恵まれた。土、日を中心とした代打で、当番回数は少ないが、2009年3月に定年退職するまで、時代の風に向き合うことができたのは私にとって望外の喜びだった。
 この間、9・11米国中枢同時テロからイラク侵攻、世界金融恐慌、そして黒人初のオバマ米国大統領誕生と国際社会は大きく変動した。国内でも小泉純一郎首相による構造改革に始まり、安倍、福田、麻生と首相の顔が目まぐるしく変わった。その時々のニュース、事象の断片は、歴史の骨組みをなして刻まれる。だが、その時、いったい、どんな匂いの風が吹いていたのか、後からたどるのは容易なことではない。時代の上っ面をなぞる新聞のコラムはちょうど風に舞い上がる木の葉のようなもので、すぐに色褪せ、変色し、風化してしまう。
 しかし、新聞のコラムには独特の味わいがある。生硬な主張や建前のきれいごとをならべれば、読者にはそっぽを向かれる。短い文章の中に、一人の人間として時代への思いをどこまで込められるか。その思いが読者の胸に届き、共感が得られたとき、記者としての喜びがわいてくる。毎回、書くたびに、自らのリズム感やユーモアのなさを思い知らされたが、拙いコラムとはいえやはり、そのときの感情が色濃くにじんでいる。
 そんなコラムをまとめて読み返してみると、風に吹かれ、舞い散った木の葉の姿を通して、21世紀初頭という時代の残り香がかげろうのように漂っている。ほんの昨日のこととはいえ、二十一世紀はこんなふうに始まったのだ、と時代を追憶するときにこの余録抄が少しでも役に立てば、うれしい。私の新聞記者人生最後の仕事を、「みずのわ出版」の柳原一コさんの好意でこのようなささやかな本にまとめることができた。ありがとう。
2009年7月
                                                                  池田知隆


[目次]

2001〜2002年
炭鉱閉山/河合文化庁長官/晩年学/桃太郎/センバツと桜/緑の滴/スポーツの楽しみ/夏休み/小林一三精神/アフリカ納豆/アフリカ友の会/患者図書館/カンガルーの家/煩悩を払う

2003年
成人の日に/天上の鬼/世界水フォーラム/甲子園の時計/鉄腕アトム/将棋名人戦/穀雨/休むこと/少年赤十字/母を思う心/エベレスト登頂/関西の元気力/日比谷公園/ホタル/のび太先生/山本周五郎生誕百年/タイガース幻想/校長の死/幼児殺害/小学生女児監禁/中高年の自殺/折り鶴/原爆忌/おはなし村/お地蔵さん/日本海時代の祭典/お手玉/花咲か爺さん/阪神「劇場」/21世紀農場/弁当の日/冒険教育/勝負の分かれ目/まいど1号/クール・ジャパン/三池爆発四十年/ドラフト/紅葉/明治の精神/日米開戦/ラストサムライ/冬至/パブロ・カザルス

2004年
年賀状/成人になること/日露戦争百年/多宗教共存都市/木の城たいせつ/三峡ダム/三行ラブレター/竹槍事件/第五福竜丸五十年/お水取り/白ちゃん/宝塚九十年/オンリーワン/樹の音/野鳥の会七十年/メイストーム/引き裂かれた家族/アジサイ/熊野古道/誰も知らない/教養/大文字/アテネ五輪/コオロギ/夢見る力/イチロー/白川静/シルクロード/女児殺害/音の日/ロウソク

2005年
大人になる/阪神大震災十年/公費天国/直木三十五/琵琶湖マラソン/チューリップ革命/キャッチボール/森の生活/イコン/青い山/居場所/バンザイクリフ/エイズ/ピカドン/戦後六十年/投票/出会い/沈黙と言葉/ライトアップ/砂漠緑化

2006年
人災/実験ノート/売ったらあかん/母語/愛鳥週間/ヤポネシア/サムライブルー/劇場の夢/人生八十年計画/アフガン支援/言霊/ビリケン/マンガミュージアム/ロボコン

2007年
南極観測五十年/水仙忌/思いやり/地域の砦/国際子どもの本の日/世界本の日/環境汚染/カストロ議長/バタフライ効果/人間愛/体育の日/大阪人/寺の力

2008年
源氏千年紀/大阪の才覚/調べる学習/かけがえのなさ/鑑真忌/ブラジル移住百周年/クマゼミ/円朝忌/敬老の日/学力テスト公開/街の灯

2009年
ブライユ生誕二百年/好奇心/山の本屋さん

21世紀年表
あとがき

[著者]
池田知隆(いけだ・ともたか)
1949年3月、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1973年に毎日新聞社入社後、社会部、学芸部などを経て2001年から論説委員。2009年3月、論説委員兼学芸部編集委員で定年退職。現在、大阪市教育委員会委員長、追手門学院大学客員教授、関西大学非常勤講師。著書に「団塊の〈青い鳥〉」(現代書館)、「日本人の死に方・考」「新聞記者」(以上、実業之日本社)、「理想のゆくえ」(長征社)など。
E-mail PEB00015@nifty.com

[用紙]
ジャケット Mr.B オフホワイト 四六判Y目 135kg 4°
表紙 里紙 白  四六判Y目 170kg DIC2390/1°
見返 TS-1 R-5 四六判Y目 130kg
本文 淡クリーム琥珀N 四六判Y目67.5kg



このページのTOPへ戻る



ウエッブサイトから注文・問合せ