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「銀河鉄道の夜」の世界 (みずのわ文庫3)

北岡武司 著
2005年12月刊
四六判上製113頁
本体1400円+税
ISBN978-4-944173-35-8
装幀 林哲夫
価格 <% total_price.toLocaleString() %> 円(税込)
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ほんたうのさいはひは一体何だらう」――宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」を読み解く。

[著者]
北岡武司(きたおか・たけし)
1948年、兵庫県生。岡山大学文学部教授
著書 『真理への思慕』(共著、理想社)、『カント哲学の現在』(共著、世界思想社)、『カントと形而上学』(世界思想社)詩集 『シルエットの裏側』(思潮社)、『ビワの葉裏』(思潮社)訳書 フィヒテ『啓示とは何か』(法政大学出版局)、ハイムゼート『近代の形而上学』(法政大学出版局)、カント『たんなる理性の限界内の宗教』(『カント全集』一〇、岩波書店)
[目次]
第一章 『銀河鉄道の夜』の世界
第二章 黄泉と「いま」
第三章 幸福のパラドクス
第四章 終着駅
第五章 信じることと祈ること

[第一章 『銀河鉄道の夜』 の世界、より]

 『銀河鉄道の夜』は、均質的に続くように見える時間の一点から時間の底の持続にまで潜り込んで、ふたたび均質的な通常の時間に戻ってくるという構成になっている。その結構に呼応して、主人公ジョバンニの日常が描かれ、次いで黄泉の世界での旅、銀河鉄道の旅が描かれる。主人公の友人の名はカムパネルラである。銀河のゆらめく宇宙空間を行く軽便鉄道はカムパネルラをいずこへか連れ去っていく。その旅にジョバンニも途中まで同行する。それは私たちが生きる時空とは異質な時空の旅である。死者の国の旅路である。最後の場面でふたたび通常の時空に戻り、カムパネルラに死なれた後の、この世での情景が描かれる。
 人生はしばしば旅になぞらえられる。たしかに人生は誕生から死にいたる旅路だ。時間の相の下で見るかぎり、私たちは死ぬために生まれてきたのである。しかし旅路は人生の終わりとともに終わるわけではない。死を超えても続く。もちろん私たちは死後の世界を知ることはできない。それを主張する根拠は何一つ与えられてはいない。だがそれを否定する根拠もない。しかし私たちとしては、そうであろうと信じることはできる。それを信じるか否かは、この世での生き方に決定的な方向付けを与える。来世ではこの世の愛の行いによって、また愛の思いによって、行き先が決まるのであろう。『銀河鉄道の夜』にはそのような教えが暗示的にちりばめられている。
 「銀河鉄道」はこの世の鉄道と同じようにいくつもの路線でつながっている。人々は乗換駅で汽車を乗り換える。それぞれの愛の度合い、あるいは愛の高低に応じて定められたターミナルに行くためにである。列車に乗り合わせた人はそのための切符をもっている。まるで人生はその切符を手に入れるための旅のようである。いや、私たちは自らの自由を行使することによって、絶えずそのような「切符」をもらっている。行き先を記した切符である。この世の旅も、黄泉の旅も、究極のターミナルは「聖なる魂」となることだろう。

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