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戦争出前噺 元日本兵は語る
2008年5月刊
A5判85頁ペーパーバック
本体1000円+税
ISBN978-4-944173-33-4 C0036 1000E
装幀 林哲夫
私は、私の体験を皆の前にそっと置くだけである――
20年、1000回を超えた戦争出前噺
元日本軍兵士、90歳をこえて今なお語りつづける
[まえがき、より]
戦争体験の風化は避けられないものなのでしょうか。今、それを防ぐためにさまざまな取り組みがなされています。従来からの証言集の編纂だけでなく、それをもとに若者の好きなマンガや歌をつくりCD化したり、また、インターネットで外国の元兵士とメールのやりとりをするなど、ハイテク時代にふさわしい多種多様な工夫がみられます。
しかし、そのなかには共通することがひとつあるのです。それは戦争を体験した人の話をしっかりと聞くこと。いくら工夫を重ねても、それなしには戦争を語り続けることはできません。さらに大切なのはもちろん、そういう話を誠実な人から聞くことです。大言壮語することなく、事実をありのままに伝えることのできる人。その上、感動を与えられる。そんな人が見つかれば、戦争体験の風化もそう恐れることはないでしょう。本書の語りを務める本多立太郎さんはまさにそのような人なのです。
本書はウェブ新聞「ジャーナリスト・ネット」主催の講演会などで行なわれた、本多さんの戦争出前噺や発言を中心に、同ネットの協力を得て編集したものです。第Ⅰ部では、本多さんの出前噺のなかでも特に核心の部分を選び、編集・収録しました。
第Ⅱ部は、これまで出前噺への中傷に多くを語らなかった本多さんが、質問に答えるかたちで初めて本格的な反論を試みているものです。戦争出前噺とは聴衆を前にして、これが戦争だと大上段に構えるものではなく、自身の体験だけをそっと置くもの。そういう本多さんの言葉に接する時、出前噺が真実かどうかの疑念は最初から成り立つ余地などなかったことがわかるのです。
そして第Ⅲ部として、本多さんと中国の若者たちとがくりひろげた、本音の大討論を紹介しています。本多さんの平和への思いや日本に対する中国人の心情の一端を知ることができるでしょう。
また、戦争出前噺のよりよい理解のため、時代背景の説明文や年譜、脚註を付けました。それらの誤りはもちろんのこと、それらがいささかでも本多さんの流暢な語り口の妨げになっているのだとすれば、その責任は編者である私ひとりにあります。
さて、まずは虚心坦懐。本多さんの話に耳を傾けてください。どう感じますか。あなたの心に何が映るでしょうか。
2008年5月
常本 一
[目次]
まえがき
Ⅰ 戦争出前噺
戦争出前噺の時代背景
なぜ語るのか
何を語るのか
父との思い出
二・二六事件
ボレロの別れ
戦場での死
戦場の狂気
捕虜刺殺
補足インタビュー
Ⅱ 対談・戦争出前噺の真実
戦争出前噺を「再開」した理由
戦場を語る資格
伝聞・脚色、一切なし
本多さんは大嘘つき?
「捕虜釈放」に猛抗議
中国の学生気質
戦争体験の語り方
植民地は人間の否定
Ⅲ 戦争出前噺 in 中国
憲法九条は必ず守る
中国も核を持つな
加害者と被害者の違い
国歌は決意の証し
日本人は好戦的?
捕虜の釈放あった? なかった?
まとめ
本多立太郎関連年譜
[語り]
本多立太郎(ほんだ・りゅうたろう)
1914年、北海道小樽に生まれる。応召2回。47年、シベリアより帰国。75年に勤務先の金融機関を定年退職後、市民運動などに参加。86年より戦争出前噺を始め、今日に至る。著書『ボレロが聴きたい』(耕文社、1994年) 『トンダ・モンタ総理っ!』(すりふか文庫、2002年)ほか
[編者]
常本 一(つねもと・はじめ)
1957年、大阪に生まれる。上宮高校、ノースランド大学(米国)卒業。平和学専攻。現在、大阪国際平和センター(ピースおおさか)非常勤職員。公立高校で週に1回平和学を教えている。著書『戦争と平和の「解剖学」』(東方出版、2005年)、『脱戦争 宿命論からの「解放学」』(ジャーナリスト・ネット叢書Vol.1、2005年)
[編集協力]
ジャーナリスト・ネット(片山通夫、川瀬俊治)
URL http://www.journalist-net.com
[用紙 刷色]
表紙 OK新カイゼル 白 四六判Y目170kg K+DIC161/2°
帯 OK新カイゼル びゃくろく 四六判Y目90kg K/1°
本文 淡クリーム琥珀 A判T目46.5kg