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書影の森 筑摩書房の装幀1940-2014
2015年5月
B5判上製209頁 収録タイトル234 フルカラー図版730点
本体10000円+税
ISBN978-4-86426-032-9 C0071
装幀 林哲夫
プリンティングディレクション 高智之・黒田典孝((株)山田写真製版所)
印刷 (株)山田写真製版所
製本 (株)渋谷文泉閣
本文より
本書は、筑摩書房の装幀に携わった幾多のデザイナー、編集者、社内デザイナーの仕事の紹介をとおして、魅力あふれる豊かな実りの系譜を展望しようと企図した。そのことで、わが国の出版文化史に類いない光芒を放つとともに、出版界のひとつの指標となっている同社の装幀が果たしている役割を多角度から浮き彫りにできれば、と思う。
筑摩刊行本の装幀は幾多の社外デザイナーがかかわったり、専門に近い社員もしくは専門スタッフを中心とする社内装幀であったりするが、一貫して独自の品格とクォリティをたたえている。いっときの流行を追わず、奇をてらうことのない節度ある手法に基づく端正なたたずまいは、多彩な交響にあってもおのずと格調高い《筑摩カラー》を形成しているといってよいだろう。
充実した社内専門スタッフと幾多の有能な社外デザイナーの登用。この両輪こそ筑摩カラーの源泉だろう。筑摩書房の装幀にかかわった中には、社員ではあったが吉岡実のような詩人、加納光於、柄澤齊のような版画家、風間完のような挿絵家、中川一政、司修のような画家、久保孝雄・制一親子のような彫刻家、フランス文学者の渡辺一夫、編集者出身である花森安治、田村義也、絵本作家の安野光雅、コラムニストの天野祐吉のような名うての文化人でもある人たちがいる。デザイナー、装幀家以外の、こういった多士済々の才能によっても支えられてきたのだ。筑摩書房はわが国の装幀文化が、分野を問わず広く門戸を開いてきたよき伝統を体現してきたのであり、まさにその歩みは、装幀文化の縮図であり、みごとな見取り図だといってよい。実際、私はこれほどのロールモデルをほかに知らない。筑摩本の時代性を超えた功績であり、並びない魅力である。
書物が時代の産物であると同じく、装幀もまたそれぞれの時代の文化状況を刻みつけている。各時代の嗜好や背景にある印刷技術の変遷が、リトマス試験紙のように如実に映し出されているのだ。そのため、経年による劣化状況も手がかりになるとはいえ、装幀を一瞥すると、奥付で確認するまでもなく、その書物が生まれた年代におよその察しがつく。本書は装幀に限定してはいるとはいえ、筑摩書房という並びない舞台上で演じられた出版デザイン史のドラマであり、もうひとつのと出版文化史として眺めていただければ幸いである。
[著者]
編著…臼田捷治(うすだ・しょうじ)
1943年長野県南佐久郡桜井村(現・佐久市)生まれ。長野県立野沢北高校を経て早稲田大学第一文学部卒業。元『デザイン』誌(美術出版社)編集長。現在、現代装幀史、グラフィックデザイン、文字文化の分野で執筆活動。主な著書に『装幀時代』(晶文社)、『現代装幀』(美学出版)、『装幀列伝』『杉浦康平のデザイン』(ともに平凡社新書)、『工作舎物語 眠りたくなかった時代』(左右社)などがある。
装幀・エディトリアルデザイン…林哲夫(はやし・てつお)
1955年香川県生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業。画家。書物雑誌『sumus』などを編集。著書『喫茶店の時代』(編集工房ノア)により第15回尾崎秀樹記念大衆文学研究賞受賞。編著および装幀の『書影でたどる関西の出版100』(創元社)により第9回竹尾賞デザイン書籍優秀賞受賞。他に『古本デッサン帳』(青弓社)、『歸らざる風景 林哲夫美術論集』(みずのわ出版)、『古本屋を怒らせる方法』(白水社)など。
[用紙・刷色]
表紙 平 NTほそおりGA しろねず 四六判Y目 130kg 文字=黒箔マット凹文字
表紙 背巻き コルドバ ビスター 四六判Y目 200kg 文字=黒箔マット凹文字
帯 NTほそおりGA ホワイト 四六判Y目130kg スミ+DIC342/2°
見返し NTほそおりGA しろねず 四六判Y目130kg
別丁扉 ヴァル 桜 1120×790mm Y目 薄口 K+DIC199/2°
本文 b7ナチュラル 四六判T目 79kg 4°
花布 A50