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親なき家の片づけ日記 信州坂北にて

島利栄子 文柳原一徳 写真
2015年1月
B5変形判上製191頁 写真90点
本体4200円+税
ISBN978-4-86426-027-5 C002
装幀 林哲夫
ジャケット写真 柳原一徳
プリンティングディレクション 高智之((株)山田写真製版所)
印刷 (株)山田写真製版所
製本 (株)渋谷文泉閣
価格 <% total_price.toLocaleString() %> 円(税込)
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序章(島利栄子)より
父が平成十六年、母が翌十七年に亡くなった。共に満八十六歳だった。それからもう少しで十年がたとうとしている。自分にとってこの十年間は何だったのだろう。 両親が暮らしていた家で親の遺品と向かい合いながら、どうしようどうしようと片づけに悶々としつつ、自分を確認した歳月だったように思う。千葉県八千代市から長野県東筑摩郡筑北村坂北まで、月一回、帰省する時間を作るのは、意外と大変だった。 が、帰らないではいられなかった。自分にとってどうしても大事なことであり、避けては通れないことだった。親とは、故郷とは? そして自分自身は何者なのか、結局は自分探しになってしまう。が、そんな時間がとても大事なものに思われた。 (中略)
父母が亡くなり十年たとうとするいま、すべておだやかになった。親のことを考えながら、私自身が少しずつ老化していくことを実感せざるをえない。認めたくないけれど、ここ数年老化が著しい。外見は若く装って、「若いね」と言われて喜んでいても、体は明らかに人並みに齢を取ってきた。朝晩の骨の痛み。疲れやすさ。声が出ない。つまずく。物忘れ。毎日の小さな行動すべてが、老境に入ってしまったことを思い知らされる。そのたびに父の、母のあのころのことを思い出さずにはいられない。ああ、こういうことだったのか……と。親は身をもって教えてくれていたのだ。死ぬことの意味を。両親に教えられた道に確かに自分も踏み入っていくことを実感する。もう少ししたら私達も帰省もままならなくなり、坂北に行けなくなる日も来るだろう。しかし前に向いて風は吹いている。いまは誠心誠意やるのみ。変わることを恐れない、そう自分に言い聞かせる。

[著者]
文…島利栄子(しま・りえこ)
昭和19年(1944)長野県東筑摩郡坂北村(現・筑北村)に生まれる。長野県立松本深志高校を経て信州大学文理学部卒業。女性史研究家、日本ペンクラブ会員。「現存する日記を収集・保存、活用する途を探りながら、後生に残すべき女性文化のありようを考える」をテーマに、平成8年(1996)より「女性の日記から学ぶ会」主宰。著書に『周防の女たち 嫁・姑のたたかい』(マツノ書店)、『日記拝見!』(博文館新社)、『戦時下の母 「大島静日記」10年を読む』(展望社)、『母の早春賦』(一草舎出版)など多数。「女性の日記から学ぶ会」の著作に『手紙が語る戦争』『時代を駆ける 吉田得子日記1907ー1945』(みずのわ出版)がある。

写真…柳原一徳(やなぎはら・いっとく)
昭和44年(1969)神戸市葺合区(現・中央区)に生まれる。兵庫県立御影高校を経て旧日本写真専門学校卒業。平成3年(1991)奈良新聞に写真記者として中途入社。奈良テレビ放送記者等を経て、平成9年神戸でみずのわ出版創業。平成23年山口県周防大島に移転。ミカン農家、写真館兼業。公益社団法人日本写真協会会員。編著書に『従軍慰安婦問題と戦後五〇年』(藻川出版)、『阪神大震災・被災地の風貌』『神戸市戦災焼失区域図復刻版』(みずのわ出版)、写文集に『われ、決起せず―聞書・カウラ捕虜暴動とハンセン病を生き抜いて』(立花誠一郎語り、佐田尾信作編、みずのわ出版)など。

[用紙・刷色]
カバー MTA+-FS 四六判T目110kg 4°マットPP
表紙 キクラシャ ベージュ 菊判Y目 69.5kg K/1°
見返 キクラシャ ベージュ 菊判Y目 69. 5kg
別丁扉 キクラシャ 灰鼠 菊判Y目 69.5kg K/1°
本文 MTA+-FS 四六判T目90kg 4°

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