トップページ > 出版物 >
読む人
2006年10月刊
新書判182頁ペーパーバック
本体1400円+税
ISBN978-4-944173-42-6
装幀 林哲夫
目次
読む人を描く
素描(160点)
読む人を描く人が書くあとがきのようなもの
読む人展日記
著者
林 哲夫(はやし・てつお)
1955年香川県生れ。画家。無所属。武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業。日本美術家連盟、日本出版学会会員。1979~80年ヨーロッパ各地に滞在。帰国後、京都、神戸に在住。震災により京都に戻る。画業のかたわら装幀を手掛け、書物雑誌『sumus』等を編集する。著者『喫茶店の時代』により第15回尾崎秀樹記念大衆文学研究賞を受賞。
まえがき「読む人を描く」より
人はやはり人にいちばん興味惹かれるものである。画家として人物を描きたいとずっと思ってはいるのだが、 モデルを頼むなどというのはどうも気後れがする。そんなとき誰でも思いつくのが街頭スケッチだろう。ただし、 街頭はもちろんのこと、電車の中でも人はじっとしていない。よって、ぼんくら画家としては、自然と、眠る人や 本を読んでいる人に目を向けることになる。
読む姿はきりりとして美しい。神経を集中させているせいだろうか。少々だらしないように見えても、誰もが 知らず知らずのうちに絶妙のボディ・バランスを保っている。すべてが本に向かっている。
まず眉と目から描きはじめ、顔ができたら、次に本を描く。そして手だ。手がもっとも重要である。中心となる本をサポートする手は千変万化。両手で、片手で、膝の上で、顔の前で、 手の形が「読む人」の性格を決定すると言ってもいい。難しいのは指である。親指で読んでいるページを抑え、 ひとさし指をページとページの間に差し込み、残りの指で表紙、背を支える。これがまたとても変化に富む。新聞を読む人など、 ついつい見ほれてしまうほど、あの大きな紙をタテやヨコに折り畳んだり、ひっくり返したりする手指の動きは絶妙である。 対して、携帯電話を読む人は単調だ。機能性の問題なのか、手の形はほとんどみな同じであって、この点がどうもモチーフ としては物足りないが、読む人には違いないので、ある程度の人数は収録した。
「読む人」をまとめるに当たってひとつの希望があった。眺めていると本が読みたくなる、そんな本にしたいという願いである。 それが実現しているかどうか、多少心許ないけれど、手にとって確かめていただければ幸いである。
なお本書は、スムース文庫版『読む人』に新作を加え再構成したものである。